「違い」を知るだけでは終わらない。
悩み、ぶつかりながら見つけた“本当の歩み寄り”
~AI時代だからこそ活きる、弁護士事務所の温かいチームづくり~
弁護士法人ウィンクルム法律事務所

弁護士として、経営者として事務所を牽引する中川裕紀子先生。
明るく情熱的なお人柄ですが、かつてはスタッフとのコミュニケーションのすれ違いや、
「分かってくれないなら全部自分でやろう」と孤独や悩みを抱えていたと言います。そんな中偶然出会ったのが、思考と行動の特性を可視化するエマジェネティックス®(EG)でした。
しかし、EGは組織の課題を一瞬で解決する魔法の杖ではありませんでした。導入後にも、相互理解の難しさに直面して思い悩み、深く落ち込んだ時期もあったそうです。そこからどのように前を向き、スタッフと「相互補完」のチームを築いてきたのか。具体的な取り組みと、AI時代における弁護士業務の価値について伺いました。
EGを導入する前は、具体的にどのようなコミュニケーションのすれ違いが起きていたのでしょうか?
例えば、私は「ひらめき(黄色)」や「人への想い(赤)」が特性として強く表れる事が多いのですが、青緑利き脳の弁護士は「論理(青)」や「計画(緑)」を重んじる特性です。「論理」や「計画」を重視する彼には感覚的な意図がうまく伝わらず、コミュニケーションのすれ違いがよく起きていました。
また、事務局のスタッフも「計画(緑)」的に行動することを好むメンバーが多いのですが、私が突然「これ急ぎでお願い!」と頼むと、彼女たちは受け取ってはくれるのですが、計画的に進めたいメンバーにとって、突然の依頼は負担になっていたのだと後になって気づきました。
当時はそうした違いに気づけず、ぶつかってしまうことがよくありましたね。
これは、今の仕事だけでなくて、恐らく昔からそうなんですが、自分の熱量で進めていると、振り返ると誰もついてきてくれていない・・ということが結構あったんですよね。
理解されないというか、そんな寂しさを抱えていました。
EGを導入してコミュニケーションの取り方で変えたこと(変わったこと)はありましたか?
はい。具体的には私の「パスの出し方」を変えるように意識しました。
青緑利き脳の弁護士には、指示の前に「目的・根拠・タイムスケジュール」を伝えるようにしたり、緑利き脳の事務局に対しては、業務プロセスを見える化し、依頼事項を余裕を持って伝えるように心がけています。もっとも、まだまだこちらの意識が足りないこともありますが、私が黄利き脳であると理解してくれている事務局からは「予測できる未来の幅が大きくなりました(笑)」と寛大に対応してもらっています。
EGを導入して互いの特性(プロファイル)が分かった後にも、組織づくりでの葛藤はあったそうですが・・?
そうですね。EGを導入して「見ている世界(重視すること、普通こうだよねと思うこと)が違うんだ」と理解はできて、それに合わせてコミュニケーションを取るようになり、良かったことも多いのですが、それだけで全てがうまくいったわけではありませんでした。導入後にも、コミュニケーションの壁にぶつかり、思い悩み、深く落ち込んだ時期もありました。
その時は本当にショックでしたし、「頭では相手の特性を分かって、合わせているつもりでも、本当の意味で相手を理解し、心を通わせるのは難しいのだ」と痛感しました。
そのような辛い経験から、どのようにして現在の良好なチーム関係を築いてこられたのでしょうか?
そうした経験があったからこそ、EGを「あの人は〇色だから仕方ない」という諦めの道具にしてはいけないと強く思うようになりました。EGは本来、違いを理由に線を引くためのものではなく、「どうしたらもっと相手に伝わるか」「どうしたらもっとお互いを理解し合えるか」を、お互いに考え、歩み寄るための道具ですし、もっともっと所内で活かしていきたいです。
まだまだ道のりは半ばですが、こういった経験があったからこそ、組織は強くなってきていると思います。これからも、みんなにしっかりと向き合い、大事に育てていきたいですね。
実務や日常ではどのようにEGを活用されていますか?
① あえて「業務に慣れた頃」に行うプロファイル取得
採用面接時や入社直後に取得する企業様もいらっしゃいますが、当事務所では、新しく入ったスタッフが少し「業務に慣れてきたタイミング」でEGを実施しています。入社直後の試験の時だと、無意識に無理をしてしまって本来の自分が出にくいこともあるからです。少し現場の空気が分かってきた頃に受けてもらうことで、既存メンバーとも共通言語としてスムーズに打ち解けられると感じています。
② クライアントへの「見立て」とチームでの対応(※外部講師資格があるからできることです)
弁護士業務でも、直接プロファイルが取れなくても、相談時のご様子や、やりとりから「このお客様はこの特性が利きではないだろうか」といった見立てを行っています。 「このお客様は緑が利きだろうから、丁寧に今後のステップをお伝えしよう」「この方は赤が利きだと思うから、理屈よりお気持ちに寄り添って」等ですね。事務所内でも「あのお客様は、赤が利きだと思うから、こういうフォローをしよう」と相談するなど、共通言語として対応の調整に役立てることで、お客様との関係性の向上に役立っているという実感があります。
弁護士というお仕事は、対人トラブルに関わることも多く、赤利き脳だと精神的に削られてしまうことはないのでしょうか?
私自身、お客様の感情に深く入り込みすぎそうになることはあります。
ですが、一緒になって落ち込んでしまうと解決には向かいません。
ですから、しっかりとお客様の感情に寄り添いつつも、プロとして客観的な視点を意識するように心がけています。そういう意味でも、客観的な視点を持つスタッフや、チームで支え合える環境があることは本当に助かっています。
最後に、AIが進化するこれからの時代において、弁護士の存在意義とEGの価値をどうお考えですか?
今、論理的な回答や情報処理はAIが驚くほど進化している時代です。
だからこそ、弁護士として「人がやらないとダメな部分」が問われていると思います。
それは何かというと、お客様の複雑な感情を理解し、通訳(双方の意見の食い違いを交通整理)し、温かみのあるコミュニケーションをとることです。AIは正解は出せるかもしれませんが、人は、理屈だけではなくて、感情が整理されないと動けないこともありますよね。なので、効率化できる部分はAI等に任せつつ、余った時間を「人間らしい、温かみのある対応」に注いでいきたい。完璧ではなくても、違いを理解し合い、人としてお客様の味方になれるチームを作っていくためにも、EGは本当に心強いツールだと実感しています。

