I & F Company

「正しい理屈」だけでは、人は動かないし、組織も守れない。
150人規模の会社の社長を退任した今だから語れる、
未来志向の組織づくりとEGの役割

I & F Company

■トヨタを飛び出し、異文化の「社長」へ

まず、磯部様のキャリアの転機について改めてお伺いします。32年間勤務されたトヨタ自動車でのお勤めから、山梨へ移住されたきっかけは何だったのでしょうか。

実は以前から「一度、社長業をやってみたい」という思いがあったんです。
トヨタの中ではなれませんから、どこかやらせてくれるところはないかと(笑)。
そこで縁あって、2010年の年末に山梨のある企業の代表に就任しました。
地縁も血縁もない土地への移住でしたが、妻も「面白そうじゃない」と背中を押してくれました。

実際に着任されて、いかがでしたか?

「山梨は閉鎖的だから」なんて周囲には言われましたが、想像以上の「文化の違い」に直面しました。そもそも、メーカーと、お客様と直接接する販売店では、流れている空気が全く違いました。
多くの社員と私はプロファイルの特性も違いましたので、私が良かれと思って発する言葉も、
社員になかなか通じないこともありましたし、実は会社だけでなく、
家でも妻と話が通じていなかった。まぁそれは山梨に移住する前からだったんですが(笑)。
そんな風に、もっとコミュニケーションを良くしたいと思っていた時期に
出会ったのがEG(エマジェネティックス®)でした。
「個人の思考や行動の仕方、好みが(プロファイルを通して)見える」という点に惹かれ、
受けてみたのですが、これはコミュニケーションを変えるきっかけになると直感しました。
自分のプロファイルを知った時も大きな衝撃で、興奮して家に帰って妻に話すと、
妻からは「それ、私がずっと言ってきたことそのまんまじゃない!」
と言われてしまいましたね。(笑)

■「理屈」という武器が、人を追い詰めていた

自らEGの社内アソシエイト資格を取得し、全社員にEGを導入されました。活用への手応えはありましたか?

そうですね。以前は「活用できている」と信じていました。
社員の多くが自己表現性左寄り(言葉数は控えめ)で、
考えをまとめてから発言したい特性だと分かっていたので、
彼らを急かさず「待つ」ようにしていましたし、
面談でもプロファイルを事前に確認して手元に置いていましたから。
自分自身では配慮もしているし、部下との距離も近いと思っていました。
しかし、そんな矢先に「不祥事に関する内部告発」が起きてしまったのです。

その時、社長として何を感じられましたか?

現場は目標に追われ、疲弊していたんだと思います。
目標自体は社員達と一緒に立てたものでしたが、
恐らく、「厳しい」とか「無理だ」といった本音を言えない状態だったのでしょう。
私は昔からよく「あなたには、理屈じゃかなわない」と言われていました。
私はそれを、自分の論理性が認められた「褒め言葉」だと思っていたんです。
「正しいことを言えば、人は分かってくれる」と。
でも、それは間違いでした。「理屈では勝てない」という言葉の裏には、
「あなたの言うことは正しいよ。でも・・・(現場のこの状態は分かってくれていない
だろう・・等 )」という諦めがあった。
私は正しい理屈(青の思考)を振りかざして、逆に彼らの心を遠ざけていたのだと気づきました。
社員を責める気持ちはなく、自分に対する怒りと、情けなさを痛感した出来事でした。

スタッフを孤立させない「養育の3者関係」

その失敗を経て辿り着いたのが、「養育の3者関係」という考え方ですね。

はい。心理学の考え方を組織に応用したものです。心理的安全性を保つには、「二者間」ではなく、
それを支える「第三者」が必要だという理論です。

【子供】= ビジネスで言い換えると、 お客様
(コントロールできない存在。安心して、のびのびと自分らしく振る舞う存在)
【母親】= ビジネスで言い換えると、現場スタッフ
(時にはワガママや攻撃的になる子供(お客様)を、しっかりと受け止める存在)
【父親・(妻の)父母・ママ友等】=ビジネスで言い換えると、 経営層・店長
(母親(現場スタッフ)が倒れないように、後ろから抱きとめ、支える存在)

非常に分かりやすい図式ですね。

不祥事が起きた時、この関係が崩れていました。
「現場のスタッフ、店長」が業務に疲れ果てているのに、
「私含め役員、経営層」はそれを支えることなく、「もっと効率よくやれ」「なんでできないんだ」と理屈を言っていたわけです。
現場スタッフ達が「私は(上司に)支えられている」「守ってもらえている」と実感できて初めて、
お客様の要望を抱きとめ、優しくなれる。
EGのプロファイルを知ることはもちろん大事ですが、
それはこの「抱きとめ、支える」関係性があってこそ、活きるものだと痛感しました。

読者へのメッセージ

組織の課題に悩むリーダーへメッセージをお願いします。

まず、「『なぜ』を繰り返すのをやめてみませんか?」と伝えたいですね。
トヨタ流の「なぜ(Why)を5回繰り返す」は、問題解決には非常に有効ですが、人の心に向けると、どうしても矢印が「過去」に向いてしまい、
「誰がやったんだ?」という犯人探しになってしまいます。
私は今、組織開発の視点から「アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)」
という考え方をお勧めしています。
これは、「何がダメなのか」ではなく、「組織の中でうまくいっていることは何か?」から
問いかける手法です。
ある海外の病院の事例ですが、看護師の欠勤率が高い職場で、「なぜ休むのか」をいくら調査し、
原因を潰すよう動いても解決しませんでした。
しかし発想を変えて、「毎日元気に来ている7割の人は、何が楽しくて働いているのか?」を調べ、
その要因を伸ばしたところ、欠勤率が劇的に下がったそうです。

「ダメな理由」ではなく、「うまくいっている理由」を探すんですね。

そうです。キャリアコンサルティングでも、過去の「楽しかったこと」「嬉しかったこと」を聞くと、その人が大切にしている価値観が見えてきます。EGも本来、
その人の「強み」に焦点を当てるツールですよね。「欠点」を直すより、
「強み」や「うまくいっていること」からスタートするほうが、みんなハッピーに取り組めるし、
未来に向かっていけるんだと思います。
不祥事を経験した私だからこそ、今は「うまくいっているところから始めようよ」と伝えたいですね。

これからのビジョン

最後に、今後の展望をお聞かせください。

150人規模の会社の社長を退任した今、一番やりたいのは「恩返し」です。
実は今、企業研修で得た収益の一部を使って、引きこもりの方などを支援する機関などで
無料のEGセミナーを開催したいと妄想しているんです(笑)。
引きこもり経験がある方や、就職氷河期世代の方など、
自己肯定感が下がってしまっている人たちにEGを受けてもらって、
「自分にはこんな強みがあるんだ」と気づいてもらいたい。
そうやって元気づけることができたら最高ですね。
「トヨタ」や「代表」という大きな看板を下ろした、一人の人間として、
これからも誰かの「強み」や「楽しさ」を引き出すお手伝いをしていきたいと思っています。

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